「うつ」を治す覚え書き
- 作者: 大野裕
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2000/04
- メディア: 新書
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禅僧として有名な沢庵は『不動智神妙録』という本の中でひとつの
ことにとらわれると、心の自由も身体の自由も奪われてしまうとい
うことを指摘しています。ひとつの赤い葉にとらわれてしまうと木
全体に目が向かなくなります。千手観音がひとつの手に気を取られ
ると、ほかの手が絡まってしまいます。
敵と向かい合ったとき、敵を斬ろうとするとそこに気を取られる
し、敵に斬られないようにしようとするとその思いに気を取られる
と、沢庵は言います。(p101)
最初に選ぶ選択肢が、私たちにとって一番なじみのあるものだから
です。私たちは困ったことに出会うと本能的に、自分が一番自身の
ある方法を使ってその問題を解決しようとします。それがかりにう
まくいかないようなことがあると、まるで自分が否定されたように
感じてしまいます。意識しないところで、自分の価値まで否定され
たと思って最初のやり方からなかなか離れられなくなります。
(略)こうして気持ちの悪循環がすすむのです。P103
コントロール感覚が持てないと心身ともに疲れ切ってくるのは、動
物一般に見られる現象です。そのことは、うつ病のモデルのひとつ
としても注目されている、心理学者セリグマンの学習性無力感の研
究からも分かります。これは「自分が何をやっても無駄だと思うと
動物は何もしなくなる」ということを動物を使って実証した研究で
す。(P123)
電気ショックを流し、一方はスイッチを押すと逃れられる犬と、も
う一方はスイッチを押しても逃げられない犬に分ける。
これを繰り返すと、スイッチを押しても逃げられない犬は何をして
も駄目だと思い、別の電気ショック(スイッチでなくその場所から
逃げれば逃れられる)でも、逃げようとしなくなる。