君たちはどう生きるかー吉野源三郎著ー人として大事なことは何か?

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

戦前に発行された本ですが、非常にいい本でした。
中学生1年生のコペル君という少年が主人公となり、コペル君の目を通して、人間としてのありかたを書かれているものです。
中でも、コペル君のおじさんが書いたメッセージノートが秀逸です。
コペル君というのは、コペルニクスからきたニックネームですが、地動説をとなえたコペルニクスの話を通して、以下の話が展開します。

自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりつていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしょう。大きな真理は、そういう人の眼には、決してうつらないのだ。(P27)

自分中心のものの見方だけでは、決して大きな真理には到達できないと言うことが、わかりやすく書かれています。
そして、自分で考えると言うことについては、以下のようにおじさんは書きます。

ある時、ある所で、君がある感動を受けたという、繰り返すことのない、ただ一度の経験の中に、そのときだけにとどまらない意味のあることが分かってくる。それが、本当の君の思想というものだ。これは、むずかしい言葉でいいかえると、常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけと言うことなんだが、このことは、コペル君!本当に大切なことなんだよ。ここにゴマ化しがあったら、どんなに偉そうなことを考えたり、行ったりしても、みんな嘘になってしまうんだ。(P54)

「本当に感じたこと」という感動、体験が出発点にないと、それは、自分自身の言葉でない、自分自身の考えではないものになってしまいます。ただ生きていればいいのではないということを、コペル君の友人とのエピソードを通して、人を裏切らないこと、人を差別しないこと、など大事なことが書かれています。
大人になって読んでも、反省させられることばかり。
是非とも一読をおすすめします。