100年の難問はなぜ解けたのか」感想ー数学の世界って凄いけど怖い

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影

この本を新聞広告欄で見て、録画していたNHKスペシャルを見ました。

内容は、100年間誰も解けなかった「ポアンカレ予想」を解明したグレゴリ・ペレリマンと、それまでに解明に挑んだ数学者の姿が紹介されています。

ロシアの数学者グリゴリ・ペレリマン(41)。その功績により、数学界最高の栄誉とされるフィールズ賞の受賞が決まったが、彼は受賞を拒否し、数学の表舞台から消え去ってしまった。その真意をめぐって様々な憶測を生んでいる。「ポアンカレ予想」にはこれまで、幾多の天才たちが魅了され、人生のすべてを賭けて挑み、そして敗れ去ってきた。ペレリマンがその栄誉に背を向け、姿を消したのはなぜか。そもそも数学者はなぜ難問に挑み続けるのか。番組は、ポアンカレ予想が解けるまでの百年にわたる天才たちの格闘のドラマを追い、ともすれば取りつきにくい純粋数学の世界と数学者たちの数奇な人間模様を描いていく。
NHKスペシャル)

ポアンカレ予想というものをそもそも知りませんでしたが、これが何か分かっただけでも見る価値は十分にありました。
このポアンカレ予想を解明しようとしているうちに、ある数学者が精神を病み、やがて死んでいく姿が紹介されています。
「数学の世界は、世界を数式であらわし、美しく、完全な世界。この世界に魅せられたら、やめられない」
という数学者の言葉が出てきますが、
精神を病んだ数学者は、日常生活と、数学の世界を行き来しているうちに、日常生活に戻れなくなったようです。

ポアンカレ予想を解明した、ペレリマンも、その後失踪し、恩師が尋ねてきてもあってもくれません。
近所の人も、五年間で、6回くらいしか姿を見たことが無いという徹底ぶりです。

数学とは、数式であらわされた、調和と美の世界です。門外漢の私には分かりませんが、分かる人には本当に素晴らしい世界なのだと思います。
ただ、トップクラスになるとそれを理解してくれる人がまた世界にほとんどいません。
事実、ペレリマンの証明を、世界中の数学者が検証するのに実に4年間もかかっています。
最初に、大学で数学者を前に証明した時は、その証明の意味が理解できないことに、トポロジーの数学者たちは、歎いたといわれています。

数学という美の世界に魅入られて、深い入りをしていくというのは、孤独が増していくということのようです。
深入りすればするほど、その人にしか見えない数学の美しい世界が広がりますが、それは同時に、世界で自分ん1人という、この上ない孤独な世界なのでしょう。

ペレリマンがなぜ失踪したかは、番組では明らかにされていませんでしたが、天才の孤独というのを、まざまざと見せつけられた非常にいい番組でした。