3時間で「専門家」になる私の方法

3時間で「専門家」になる私の方法

3時間で「専門家」になる私の方法

ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が、ネットを活用して、どのように記事をかいているかを通して、ネットでいかに専門家に「近い」見識を身につけるかを書いたのがこの本です。

グーグルで何でも調べたら考えなくなるじゃないか。という意見もあります。何でもかんでもググってしまって、考えなくなる人もあるかもしれません。もちろん、レポートをグーグル検索した先のブログの文章をコピペするのは論外ですが、佐々木氏は、このネットの登場が、ジャーナリズムの現場におこした変化を、元新聞記者の目から書いています。

それまでは、インタビュー一つをするにしても、下調べが大変でしたが、今はネットでたいがいのことが分かります。
ジャーナリストとして、いざ現場に出て、インタビューや、取材をする前段階でどれだけ記事にすることについての知見を深めていくのかというのがポイントになります。

ネットを使う上でのポイントは「クオリア」と「セレンディビティ」です。
クオリアとは

生々しい世界の有りさまをダイレクトに感じ取る皮膚感覚のようなものといっていいでしょう。
(中略)
世界がもっている本質を知るのかということ。生の世界認識をそのまま救い取る、その感覚こそがクオリアなのです。

と定義されています。
未知の分野は、本当になにも分かりません。それをネットを通して、まずそのままの姿のありようをとらえます。

その際に用いるのが、グーグル(検索サイト)、ブログ、2ちゃんねるはてなブックマークです。

各自の長短ありますが、それらを通して、セレンディビティが大事です。

つまり求めていたものとはまったく異なる発見、発明が偶然に転がり込んでくる、そういう状況をセレンディピティと呼んでいる訳です。

はてなブックマークがそのツールとして機能するのだと、紹介されています。
人気エントリーもそうですが、ここであげられているのはタグ検索機能です。ある単語「高齢化問題」などについて、検索エンジンでは出て来ないブログの言及記事に、偶然出会うような確率がここで起きます。

記事にする際、まずマトリックスを作り、そこから全体像を把握して、そして何処をどこまで深追いしていくかということを、ネットをつかって、それまででは考えられない情報を取り込み、把握し、記事にしていくということです。

最後にこう書かれていました。

人々のさまざまな思考や議論を仲立ちにして、わたしたちは自力では絶対にたどりつけないような知見を得ることができ、さらにはその分野の全体像を、人々の思考や議論をベースにしてダイレクトに受け入れることが出来るようになります。

ほんとうにその通りと思います。
大きな事件が起きると、それについて言及するブログが沢山はてなブックマークを集めます。
平成20年の秋葉原通り魔殺人事件の時には、本当に多くのブログがエントリーを書き、人気エントリーに上がっていました。
そのなかのいくつかを読んだだけでも、自分の中にない視点、角度からの考察が沢山有り、新聞だけではわからないことがいろいろと明らかになりました。

なにかブログを書いたり、記事を書く人には必ず読んでもらいたい一冊です。