リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間
- 作者: 高野登
- 出版社/メーカー: かんき出版
- 発売日: 2005/09/06
- メディア: 単行本
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泊まったことはありませんが、リッツカールトンと言えば、サービスの良さで大変有名です.もちろん宿泊料も、それ相応の値段ですが。
顧客第一主義は、どこのホテルも掲げていますが,なぜリッツカールトンはその中でも抜きん出た評価を得ているのでしょうか。
それはホスピタリティ(おもてなしの精神)です。
単なるサービス業を超えて,お客様に感動を与える為に日々努力をし、それにはどういうことを心がけているのかを,リッツカールトン東京の社長である著者が書いた本です.
一読して,これは凄いと思いました。
リッツカールトンのサービスの基本理念は、クレドというカードに納められています.
どんなものかというと
- リッツカールトンホテルは、お客様への心のこもったおもてなしと、快適さを提供することを、もっとも大切な使命とこころえています。
- 私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために、最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。
- リッツカールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感、そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。
これは、お客様に対するもので,それだけでなく、会社から従業員に対する約束というものもあります。
- 従業員への約束
- リッツカールトンでは、お客様へお約束したサービスを提供する上で、紳士・淑女こそがもっとも大切な資源です。
- 信頼、誠実、尊敬、高潔、決意を原則とし、私たちは、個人と会社のためになるよう、もてる才能を育成し、最大限に伸ばします。
リッツ・カールトンは、このような職場環境をはぐくみます。
これも、全従業員が、いつも振り返り身につけているものだそうです.
中でも,「もてる才能を育成し、最大限に伸ばします」というところに、感動しました.
たんなる従業員(労働力)ではなく、個人を会社の財産として,その能力を伸ばすとうたっています.
それだけでなく、いかのようなものもあります。
サービスの3ステップ
1 あたたかい、心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びするよう心がけます。2 お客様のニーズを先読みし、おこたえします。
3 感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。できるだけお客様のお名前をそえるようこころがけます。
これを、実行したら、仕事場も家庭も大がわりですね。
リッツカールトンでは、従業員同士も、紳士淑女として、お互いがこのように接するように心がけているそうです.
そして、個別の具体的なことについて、「ベーシック」といわれるものがあります。
数が多いので,ホテルであるかどうかに関わらず、大事なところを抜き書きしてみました.
ザ・リッツ・カールトン・ベーシック
10・従業員一人一人には、自分で判断し行動する力が与えられています。(エンパワーメント)。お客様の特別な問題やニーズへの対応に自分の通常業務を離れなければ成らない場合には,必ずそれを受け止め、解決します。11・妥協のない清潔さを保つのは、従業員一人一人の役目です。
14・「いつも笑顔で。私たちはステージの上にいるのですから。」いつも積極的にお客様の目を見て応対しましょう。お客様にも、従業員同士でも、必ずきちんとした言葉遣いを守ります。(「おはようございます。」「かしこまりました。」「ありがとうございます。」など)
15・職場にいる時も出た時も、ホテルの大使であるという意識をもちましょう。いつも肯定的な話し方をするよう、心がけます。何か気になることがあれば、それを解決できる人につたえましょう。
17.リッツ・カールトンの電話応対エチケットを守りましょう。呼び出し音3回以内に、「笑顔で」電話を取ります。お客様のお名前をできるだけお呼びしましょう。保留にする場合は、「少しお待ち頂いてよろしいでしょうか?」とおたずねしてからにします。電話の相手の名前をたずねて、接し方を変えてはいけません。電話の転送はなるべくさけましょう。
18.自分のみだしなみには誇りを持ち、細心の注意を払います.従業員一人一人には、リッツ・カールトンの身だしなみ基準に従い、プロフェッショナルなイメージを表す役目が有ります.
現場への権限委譲、清潔さ,お客様と同じ目線、いつも笑顔で と
もう凄いです.
現場の人間が、サービス業では最前線であり、ホテルの命ですから、現場の人間がどれだけ仕事に集中できるかがとても大切です.
人が能力をもっとも発揮するのは、この「誇りと喜び」が一緒に成って相乗効果を生んだ時ではないでしょうか。(P79)
とありますように、この仕事をやってよかった!、という喜びと誇りがないところに、いい仕事はできません。
また、人事採用についても,
技術は訓練できてもパーソナリティは教育できない
これもまったく言われる通りです.技術は教え、身につけることは出来ますが,人格はなかなか教育できるものではありません.
そうして、採用した新人に対しては
会社がオリエンテーションを通して伝えることは,新しい職場に対する不安を取り除いてあげるという姿勢です.温かく迎え入れることで、不安は安心へと変わり、それはすぐに期待や信頼、そして自身へと変わっていきます。
と、すごい心配りです.
採用された人材が,また素晴らしいサービスを提供できるのは,クレドをただ掲げているからではありません。
どこの会社にも、立派な社訓や標語が掲げられています.
しかし、現実には,「社訓に書いてあることは,その会社ができていないこと」と揶揄されるほど、ただの、かけ声に成ってしまっているところも多いのではないでしょうか.
事実,リッツカールトンの成功を聞き,クレドを導入したホテルはいくつもあったそうですが,実際はなかなか、本家リッツカールトンのようには成らなかったようです.
では、なぜリッツカールトンは,クレドの精神を忠実に実践するスタッフがいるのでしょうか。
その秘訣は,朝礼にあるとのことでした.
7毎日の「ラインナップ」(朝礼)が社員を育てる
ラインナップはディスカッション方式で,司会役が投げかけた質問をみんなで考えて話し合います.
(略)
大切なのは,自分の頭で考えるプロセスです.マニュアル化して「ああしなさい、こうしなさい」と教えても、企業理念やビジョンを浸透させることはできません。自社の理念やビジョンは、自分自身に問いかけてもらうことで初めて従業員の血となり肉となり、具体的なサービスへと反映されていくのです。
また、ラインナップあ毎日欠かさず行うことに意味が有ります。
この「自分の頭で考えるプロセス」がとても大事です.
いわゆるマニュアル通りでは、心のこもったサービスとはいえません。
心がないといったら、それまでですが、言葉をかえば、考えていないということです.
「いらっしゃませー!」とか、「今日はよくこられましたー!」と大きな声で、店員が言っていても全然嬉しくない店ってありますよね。
これって、スタッフが客と心から向き合ってないからです。
心から向き合い、相手のことを考えるには,日頃から思考訓練しないととっさには出来ないのではないでしょうか.
ちょっとまえのニュースで、レンタルビデオ店で子供が客にぶつかって転んだ際,ぶつかった男性客は、子供に何もいわずに、ただおろおろするばかりだったという話をききました。
これも、そういう現れかと思います.
とっさの時に,相手のことを思っていても言葉や行動が出ないのは、日頃そのことについてどれだけ頭を使っているかということではないかと思います.
どの仕事も、最後はお客様が相手になります。そういう点で、ホスピタリティの実践とは,どういう心がけなのか,非常に詳しく教えてくれた本でした.
サービス業の人、必読です!