男のための自分探し−ロスジェネ世代は読むべき1冊
- 作者: 伊藤健太郎
- 出版社/メーカー: 1万年堂出版
- 発売日: 2008/08/04
- メディア: 単行本
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男は単純なので、お金、車、恋人と、欲しいものを手に入れようと奮闘する−これぞ遺伝子の思うつぼ
とあったので、よくある「社会的成功よりも、自分らしく生きるにはどうしたらいいか?」といったような本かと思って読み始めましたが、思いのほかハードな内容に驚きました。
著者は哲学者、伊藤健太郎氏。
いわゆるロスジェネ(ロスト・ジェネレーション)世代にこそ読んで欲しい本だと思いました。
バブル崩壊と、就職氷河期のあおりをうけて、「自分探し」というキーワードが流行しました。
この本もそのあたりを狙って著者が書いたのだとおもいますが、自分のやりたい仕事を見つけたり、バックパッカーとなって海外を放浪するセンチメンタルな「自分探し」は、本当の意味で自分探しになってはいないのだと、この本ではバッサリと切り込みます。
そもそも「自分探し」という言葉の定義を、哲学者らしく、プラトンからウィトゲンシュタインの著作から、最近の映画などから幅広く分かりやすく例にとって説明してくれているので、哲学にはほとんど基礎知識のなかった私でもよく分かりました。哲学スゴイです。
「自分探し」の「自分」「ワタシ」とは何かを、いろいろな角度から迫っていきますが
「自分探し」は「真の自由探し」です。
としたあと、
「自分がしたいこと」と、「自分が望むこと」とは、全く別なのです。
とし、さらに、自由について
自分が死ぬことを自覚したうえで、いかに生きるべきかを決断することが、本当の自由であり、自分らしく生きることだとハイデガーは訴えました。
(略)
自分の進む道は、自分で選ばなければなりません。最後どこにつくかは、あなたが自分で決めることです。60億の人が60億通りの道を別々に歩んでいる、自己責任の孤独な旅が人生です。
と、旅に出て行く自分探しの人たちに、厳しい現実を提示します。
ロスジェネ世代に、自分探しが多いのは、それ以前の人生モデルが、壊された最初の世代だからだと思っています。
それは先進国で、あるていどの経済成長を果たしたところでは必ずぶつかる問題です。いわゆる自由なるが故の苦しみです。
人間は、自由に好きな道を進みたいと願いつつも、重苦しい自由はさっさと捨てて、大衆と同じ道を進んで安心したいのです。
ロスジェネの更に下の、ケータイ小説世代はこういう感じがまた強いと感じています。KYなどという言葉も、「同じ道を進んだほうが楽」だからです。
自由に生きることもつらく、かといって、人にあわせていくのもまた辛いことです。
しかし、厳しいとはいいながら、これが人生の現実だと、知った上で、その向こうにあるのが、自分探しの答えなのでしょう。
最後の方に
「自分探し」とは、「私が生きる意味」を探すこと
(略)
ウィトゲンシュタインは「意味のある人生」とは「幸福な人生」だと言います。
(略)
『幸福な生は、それが唯一の正しい生であることを、自ら正当化する(草稿)』
「幸福な人生」だけが、何の理由も証明もなしに、「意味のある人生」といえるのです。
哲学って、すごいと思うと同時に、その先は、哲学を越える問題ですが、幸福に生きることはとても大事なことだとわかりました。
やっぱり、知らないってことは、よくないことだと思い知らされた本です。
ロスジェネ世代の人には特に読んで欲しい1冊です。おすすめ。
著者のブログをみると、次回作も作っているようで、こちらも期待
愛と哲学の自分探し(生きる意味は結婚?): ●『女が自由に生きる幸せ探し』目次